アービトラージ(裁定取引)は、異なる市場やFX業者間で生じる価格差を利用して確実に利益を得る取引手法です。
FX取引では、大きな価格差はありませんが、小さな価格差でも大量の通貨を売買することで利益を上げることができます。
しかし、アービトラージは、FX業者によっては禁止している場合があり、実際には多くの制約とリスクが伴います。
目次
アービトラージとは
アービトラージは、異なる市場やFX業者間での価格差を利用して利益を得る手法です。
例えば、同じ商品がある市場では安く、別の市場では高く取引されている場合に、安い市場で買い、高い市場で売ることで、その価格差が利益となります。
実際には、取引のタイミングや市場の流動性、手数料などが影響するため、完全にリスクがないわけではありませんが、確実に利益を得られる投資戦略の一つとして広く認識されています。
FX取引でのアービトラージのやり方
アービトラージは以下4種類のやり方があります。
- 業者間アービトラージ
- スワップアービトラージ
- トライアングルアービトラージ
- ボーナスアービトラージ
業者間アービトラージ
業者間アービトラージは、異なるFX業者間のレート差を利用して利益を得る方法で、「レイテンシーアービトラージ」とも呼ばれています。
海外FX業者は、顧客からの注文をインターバンクに流す際、以下の2つの方法を取ることが多いです。
- 顧客の注文を直接インターバンクへ流す
- 顧客の注文をFX業者が自動的にインターバンクへ流す
後者の場合、FX業者を経由するため、レート配信が前者よりも若干遅れます。
そのため、業者Aで1ドル=100円、業者Bで1ドル=101円の場合、業者Aでドルを購入し、業者Bで売却することで1円の利益を得ることができます。
スワップアービトラージ
スワップアービトラージは、ロングとショートのポジションを同時に持ち、同一銘柄のスワップポイントの差を利用して利益を得る方法です。
スワップポイントとは、通貨ペアの金利差に基づいて毎日支払われる利息のことです。
スワップアービトラージでは、買いと売りのスワップ合計がプラスの通貨ペアを探す必要があります。
また、稼げる金額は少なく、十分な利益を得るには多くの資金が必要です。
トライアングルアービトラージ
トライアングルアービトラージ(または三角裁定取引)は、1つのFX業者で異なる3つの通貨間の価格差を利用して利益を得る方法です。
例えば、円をドルに交換し、ドルをユーロに交換、最後にユーロを円に交換することで利益を得ることができます。
トライアングルアービトラージで利益を得るには、3つの通貨ペアのバランスが崩れている必要があります。
また、海外FX業者の場合、手数料が高いため利益が出にくいです。
ボーナスアービトラージ
ボーナスアービトラージは、複数のFX業者で口座を開設し、ボーナスを利用して利益を狙う手法です。
例えば、2つの業者に5万円ずつ入金し、それぞれのボーナスを合わせて10万円の残高を作ります。
雇用統計などで大きな値動きが予測される直前に、A業者でドル円を買い、B業者でドル円を売ります。
相場が上昇した場合、A業者で含み益が増え、B業者はロスカットされます。
このとき、B業者の損失はボーナスを含むため、実際の損失は入金額の5万円だけです。
ただし、この方法は多くのFX業者で禁止されており、発覚すると口座凍結や利益没収のリスクがありますので、注意が必要です。
FX取引でのアービトラージのメリット
- 低リスクで短時間で利益を得られる
- 知識が少なくてもできる
- 海外FXを利用すると勝率が向上する
低リスクで短時間で利益を得られる
また、アービトラージは価格差を利用して利益を得るため、基本的にどの手法も損するリスクが少ないとされています。
また、アービトラージは、短時間で利益を得ることができます。
知識が少なくてもできる
アービトラージは、専門的な知識や技術がなくても実行でき、初心者でも比較的扱いやすい手法です。
基本的な作業は、取引所のチャートを確認して価格差を見つけることです。
ただし、売買のタイミングは通常のFXトレードと同じく重要で、タイミングを誤ると損失を招く可能性があります。
したがって、初心者でも適切な売買のタイミングを見極める能力や、取引を避けるべき場面を判断する力が必要です。
海外FXを利用すると勝率が向上する
海外FX業者を利用すると、アービトラージの勝率が上がる傾向があります。
理由は、「広いスプレッド」と「ゼロカットシステム」が関係しています。
まず、広いスプレッドにより業者間の価格差が生じやすく、アービトラージの利益が国内FX業者よりも大きくなります。
また、ゼロカットシステムにより、資金がゼロになっても借金(追証)を負う心配がありません。
さらに、海外FX業者では高いレバレッジ取引が可能で、少額でも大きな取引ができるため、小さな価格差でも十分なリターンを狙えます。
FX取引でのアービトラージのデメリット
アービトラージは、理論上は低リスクで利益を得ることができる手法ですが、実際には多くの制約とリスクが伴います。
- ローリターンで時間の拘束が発生する
- まとまった資金が必要
- 海外FX業者ではアービトラージを禁止している場合が多い
ローリターンで時間の拘束が発生する
アービトラージは、価格差が小さいため、大きな利益を得るのは難しいです。
多くの取引を繰り返して少しずつ利益を積み上げる必要があります。
また、価格差が生じるまで待つ必要があり、その間に価格が変動するリスクもあります。
頻繁に価格をチェックする必要があるため、時間的な拘束が発生します。
まとまった資金が必要
アービトラージで得られる値幅はごくわずかで、スキャルピングほど頻繁にチャンスはありません。
そのため、アービトラージだけで利益を得るには、大きなロットで取引する必要があります。
しかし、ロットを増やすと必要証拠金も高くなるため、ロスカットの損失を避けるためには十分な資金を準備しておくことが重要です。
また、アービトラージでは最低でも2つのポジションを持つ必要があります。
そのため、ポジションが増えるとスプレッドコストも増えるので注意が必要です。
海外FX業者ではアービトラージを禁止している場合が多い
「業者間アービトラージ」や「ボーナスアービトラージ」は、FX業者に損失を与えるためほぼすべてのFX業者で禁止されています。
「別口座での両建て」や「業者間での両建て」などは、発覚すると口座凍結などの処分を受ける可能性が高いです。
重いペナルティを避けるために、アービトラージを行う際はFX業者の規約を確認しましょう。