日本では現在、金利が非常に低い状況が続いており、銀行にお金を預けても利息による収益はほとんど期待できません。
さらに、年金制度に関しても、年々受給開始年齢が後ろ倒しになっており、少子高齢化による将来の不安が指摘されています。
このような状況の中で、個人が自らの資産形成を行うための手段としてNISA(少額投資非課税制度)が注目されています。
また、日本の個人投資家にとって、新NISA(少額投資非課税制度)の導入は、投資戦略を見直す絶好の機会です。
この記事では、新しいNISAの特徴や旧NISAとの比較や違いについて解説します。
目次
NISAとは
NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」を指します。
年間で最大120万円までの投資に関して、通常ならば利益や配当に約20%の税金が課せられますが、NISA制度を利用すると、最大5年間その税金が免除される特典があります。
NISAは、日本における個人の資産形成を促進し、長期的な投資文化を根付かせる目的で2014年に「一般NISA」、2016年に「ジュニアNISA」、2018年には「つみたてNISA」がスタートしました。
日本政府がNISAを導入した理由
NISA(少額投資非課税制度)は、イギリスのISA(Individual Savings Account)という制度をモデルに、日本政府が導入した投資促進のための制度です。
イギリスではISA(Individual Savings Account)として知られるこの制度は、投資に対する税負担を軽減し、より多くの人々に資産運用の機会を提供することで、国民の長期的な貯蓄や投資を促進することを目指しています。
日本では、伝統的に貯蓄を好む文化が根強く、投資への参加率が低いという特徴があります。
そのため、政府はより多くの国民が貯蓄ではなく、投資に資金を回すことを促す目的でNISAを導入しました。
NISAは、税制上の優遇を通じて、個人投資家が手軽に株式や投資信託などの投資商品にアクセスできるようにすることを目指しています。
NISAの導入に伴い、個人が手軽に投資を始め、資産を増やすことができる環境が整えられました。
旧NISA(2014年~2023年)の特徴
旧NISA(一般NISA)は、個人投資家が年間120万円までの投資を非課税で行えます。
特徴
- 対象者:18歳以上の日本国民
- 非課税投資枠:年間120万円
- 非課税期間:投資した年から5年間
- 対象商品:上場株式や株式投資信託
- 税制優遇:非課税期間中の配当金や譲渡益が非課税
- 口座数:一人1口座まで
旧NISAは小額から投資を始めやすく、税制面での優遇を受けられる点が魅力です。
しかし、NISAの口座開設は1人1口座までで、1人の名義で複数の金融機関に同時に開設はできません。
また、非課税期間が終了すると、その後の利益には税金が課されるため、期間管理が重要です。
旧NISAの種類と比較
NISAには以下3つの種類があり、2023年で現行のNISA制度における投資受付は終了しますが、一般NISAとつみたてNISAが一本化され、2024年からは新たなNISA制度が始まる予定です。
そのため、旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選択する必要があります。
旧NISAの種類
- 一般NISA
- つみたてNISA
- ジュニアNISA
下記の表は3種類のNISAを比較したものです。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
投資可能期間 | 2014年~2023年 | 2018年~2042年 | 2016年~2023年 |
対象者 ※日本在住に限る | 18歳以上 | 18歳以上 | 0歳~17歳まで |
非課税投資枠 | 毎年120万円 | 毎年40万円 | 毎年80万円 |
対象金融商品 | 株式投資信託、上場株式など | 国が定めた基準を満たした、低コストの株式投資信託など | 株式投資信託、上場株式など |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 | 最長5年間 |
一般NISAの非課税の期間は最大5年間ですが、つみたてNISAのそれは20年間と長期にわたります。
また、非課税での投資上限も異なり、一般NISAは年間で120万円、つみたてNISAは年間40万円と定められています。
一般NISAとは
一般NISAでは、毎年最大120万円までの投資が非課税で、5年間継続すると、合計で最大600万円を非課税で運用できます。
非課税枠内での投資では、金融商品を購入する際の金額に上限は設けられていますが、購入回数に制限はありません。
そのため、投資のタイミングや投資する金融商品を分散することで、柔軟な資産形成が可能なため、投資信託などを自分のタイミングで売買したい投資家に適しています。
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、日本で導入されている長期的な資産形成を目的とした非課税投資制度で、最大の特徴は年間40万円までの投資が非課税となる点です。
非課税の適用は、最長で20年間続きます。
投資家は、この枠内で毎月定額の投資を行い、選択した投資信託やその他の金融商品を購入できます。
長期間にわたる非課税の恩恵により、資産が穏やかに成長するのを見守ることができます。
ジュニアNISAとは
ジュニアNISAは、日本での未成年者向け投資支援制度で、子どもたちの将来のための資産形成を目的としています。
ジュニアNISAでは、親権者や祖父母など近親者が代わりに運用を行うことができました。
しかし、ジュニアNISAは2023年末で終了し、2024年からは新たな形での運用が始まります。
ジュニアNISAの廃止に伴い、2024年以降は未成年の口座開設者でも、資産を非課税で引き出せるようになるため、必要な時に資金を自由に利用できます。
2024年からの新NISAの特徴と旧NISAとの違い
「令和5年度税制改正」により2024年1月から新NISA制度が始まります。
2024年から開始される新NISAは、旧NISAをリニューアルした制度です。
新NISAは、非課税投資枠の拡大と投資対象商品の多様化が主な特徴です。
新NISAの最大の魅力は、より大きな非課税投資枠により、より多額の資金を非課税で運用できる点です。
旧NISAからの主な変更点
- 制度の継続
- 年間投資上限額が最大360万円に拡大
- 最大1,800万円の生涯非課税限度額に変更
- 一般NISAとつみたてNISAを併用できる
- 非課税保有期間が無期限に変更
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
制度の併用 | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ |
年間投資上限額 | 120万円(一般NISA選択時) | 120万円(一般NISA選択時) | 360万円 | 360万円 |
120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 | |
生涯非課税限度額 | 600万円 | 800万円 | 1,800万円 (うち成長投資枠1,200万円) | 1,800万円 |
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 | 無期限 | 無期限 |
売却時の限度額 | – | – | 買付額分の投資枠再利用可 | 買付額分の投資枠再利用可 |
制度実施期間 | ~2023年末 | ~2042年末 新規買付:~2023年 | 2024年~(恒久化) | 2024年~(恒久化) |
買付方法 | スポット 積立 | 積立 | スポット 積立 | 積立 |
対象商品 | 株式 投資信託 ETF | 投資信託 | 株式 投資信託 ETF | 投資信託 |
年齢 | 18歳以上の成人 | 18歳以上の成人 | 18歳以上の成人 | 18歳以上の成人 |
制度の継続
旧NISAでは、新規投資ができるのは2023年までと期限が決められており、非課税投資枠を使えきれない場合がありますが、新NISAでは制度が継続されるため、自分の好きなタイミングで開始できます。
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
実施期間 | 2023年まで | (買い付けは2023年まで) | 2024年~継続 | 2024年~継続 |
年間投資上限額が最大360万円に拡大
一般NISAでは年間投資上限額が120万円、つみたてNISAは40万円までですが、新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠を合わせた、最大360万円まで投資できます。
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
年間投資上限額 | 新規投資額で120万円 | 新規投資額で40万円 | 240万円 | 120万円 |
最大1,800万円の生涯非課税限度額に変更
旧NISAの非課税投資枠は、一般NISAで最大600万円、つみたてNISAで最大800万円で、金融商品を売却しても非課税投資枠は復活しません。
一方で、新NISAでは、投資資産の売却により生涯非課税限度額が復活します。
それに伴い、生涯非課税限度額は、最大1,800万円までです。
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
限度額(総枠) | 600万円 | 800万円 | 1,800万円 (そのうち成長投資枠は1,200万円) | 1,800万円 |
一般NISAとつみたてNISAの併用できる
旧NISAでは、一般NISAとつみたてNISAの併用はできませんが、
2024年からの新NISAでは、一般NISAとつみたてNISAが一本化され、一つの制度になります。
そのため、新NISA制度では変更や選択の必要がなくなります。
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
制度の併用 | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ |
非課税保有期間が無期限に変更
旧NISAでは非課税保有期間に限りがあり、一般NISAは最長5年、つみたてNISAは20年まででしたが、新NISAでは無期限です。
旧NISA | 旧NISA | 新NISA | 新NISA | |
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
非課税保有期間 | 最長5年 | 最長20年 | 無期限 | 無期限 |
まとめ
金融庁が推進するNISAは、資産形成を目的とした少額投資非課税制度で、現行NISAは2023年で新規投資が可能な期間が終了し、2024年からは新しいNISAが始まります。
新NISAでは、年間の投資上限額の増額や非課税期間の無期限に変更など、さらに利用しやすい仕組みが導入されます。
この変更により、投資家はより長期間にわたって大きな資金を投資し、税制上のメリットを享受できるようになりました。
年金制度の不透明さや少子高齢化の問題を考慮すると、自らの将来に備えるためにも、NISAを含む投資の検討は非常に重要です。
投資はリスクを伴いますが、適切な知識と戦略に基づけば、安定した資産形成に寄与することが期待されます。
ぜひ、自分に合った投資方法としてNISAの活用を検討してみてはいかがでしょうか。