専業トレーダーが行うべき税金対策として、取引手数料やソフトウェア購入費などを経費として計上し、課税所得を減らす「経費計上」、他の雑所得と損益通算して税負担を軽減する「損益通算」、利益を翌年に持ち越すことで課税所得を減らす「利益の持ち越し」、高い利益がある場合の「法人化」、青色申告による最大65万円の特別控除を活用する「青色申告」、税率の低い国への「海外移住」などがあります。
この記事では、税金の基本から具体的な対策まで、専業トレーダーが知っておくべき情報を詳しく解説します。
目次
専業トレーダーの年間利益に基づく税金
投資における税金の基本は、1月から12月までの1年間のトータル利益に基づいて計算されます。
上記の1年間の期間内で、もし損失が利益を上回れば、税金は発生しません。
つまり、年間を通じての損益が重要となり、最終的な利益がなければ税金の心配は不要です。
また、投資においては「含み益」の概念があります。
含み益とは
保有している資産が価値を増しているものの、実際にはまだ売却していないため利益が確定していない状態を指します
税金の計算では、含み益は考慮されません。
また、ポジションを保有中で、まだ決済してない含み損益は課税対象とはなりません。
税金が課されるのは、実際に売却を行い、利益が確定した時点のみです。
投資における税金は、実際に得た利益に基づいて計算されるため、年間を通じての収支管理が非常に重要です。
国内FXの税金
FX取引に関する税制は、他の所得とは異なり、固定の申告分離課税制度が採用されています。
FX取引から得られる利益の金額に関わらず、一律に20.315%が適用されます。
税金20.315%の中には、以下3つの税金が含まれています。
税率20.315%の内訳
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%
※復興特別所得税は、2013年1月1日から2037年12月31日までの期間、東日本大震災の復興資金として徴収される税金です。
FX取引では、給与収入と異なり源泉徴収が行われないため、利益が発生した際には自ら確定申告を行う必要があります。
FXでの税金は、申告分離課税(20.315%固定)のため、他の所得に適用される累進課税制度における最高税率45%に加えて住民税10%、合わせて55%と比較すると、FX取引の税負担は相対的に低いということを意味します。
海外FXの税金
海外FX業者を利用する場合、利益は雑所得として扱われ、日本の税制下で累進課税の対象となります。
累進課税の対象とは、所得が増加するにつれて税率も高くなるということを意味し、最大で所得税45%に加えて住民税10%、合わせて55%の税率が適用される可能性があります。
税率最大55%の内訳
- 所得税:最大45%
- 住民税:10%
累進課税は、利益が大きくなるほど相対的な税負担も増大するため、特に高額の利益を得るトレーダーにとっては重要な考慮事項です。
さらに、海外FX業者の利用では、日本のFX業者と異なり、申告分離課税を利用することができず、損益通算や損失繰越の適用も受けられません。
したがって、海外FX業者を利用する際には、高い税率や税制上の不利益を考慮に入れ、より慎重な資産管理と税務計画が求められます。
日本のFX業者を利用した場合の固定税率20.315%と比較すると、海外FX業者の利用は税負担が大きくなる可能性があるため、投資戦略を練る上で注意が必要です。
所得金額 | 税率(総合課税+住民税10%) | 控除額 |
195万円以下 | 15% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 20% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 30% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 33% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 43% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 50% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 55% | 4,796,000円 |
FX取引で課税対象となる利益
FX取引においては、為替差益とスワップポイントの損益を総合して計算し、利益が生じた場合には税金の納付が求められます。
課税対象となる利益
- スワップポイント
- 為替差益
スワップポイント
スワップポイントは、FX業者によって税務上の扱いが異なります。
一部では実際に決済した時点で課税対象となり、他の場合は発生した時点で課税されることもあります。
実際に取引を行う前に各社の規定を確認し、どのように税金が計算されるのかを理解しておくことをおすすめします。
為替差益
為替差益は、通貨の価値変動から生じる利益のことを指します。
具体的な例として、もし1ドル=100円の米ドルを購入し、時間が経過した後に1ドル=140円になったとします。
この時、購入した米ドルを売却することで、元の購入価格との差額分の40円が利益として得られます。
この利益が為替差益と呼ばれるもので、外国為替市場における取引で重要な収益源の1つです。
FX税金の種類
投資の形態には多岐にわたり、株式投資、FX、暗号通貨などがありますが、投資種類ごとに税金の計算方法や税率が異なります。
証券投資
株式や投資信託などの伝統的な証券投資では、利益に対して20.315%の税率が適用されます。
これは所得税15.315%と住民税5%を合わせたものです。
ただし、株主優待などの特定の収益は雑所得として扱われ、異なる税率が適用される場合があります。
FX・先物取引
FXや先物取引、オプション取引などの金融派生商品についても、同様に20.315%の税率が適用されます。
これらの取引は、所得税と住民税の合計で一律に課税されます。
暗号通貨(仮想通貨)
暗号通貨(仮想通貨)の場合は、税制が異なり、利益は雑所得として扱われます。
そのため、所得税率は最大45%まで上がり、住民税は一律10%が加算されます。
暗号通貨の税率は所得に応じて変動し、他の投資形態と比較して高い税負担になる可能性があります。
- 個別株や投資信託:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)※株主優待は雑所得となり、一律20.315%ではない
- FXや先物取引、オプション取引:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
- 暗号通貨(仮想通貨):雑所得。所得に応じて変動(所得税は最大45%、住民税は一律10%)
また、異なるカテゴリーの投資間で損益通算を行うことはできません。
つまり、株式投資での損失をFX取引の利益で相殺することはできないため、各投資ごとに税務計画を立てる必要があります。
脱税や申告漏れに対する追加課税
税務署はFX取引における脱税を厳しく監視しており、脱税行為はほぼ確実に発覚します。
FX業者は顧客の取引情報を税務署に報告しており、マイナンバー制度によって個人の取引情報が一元化されているため、税務署はトレーダーの利益や申告状況を容易に把握できます。
税務署は、脱税が疑われるトレーダーに対して、すぐにではなくある程度の時間を置いてから税務調査を行うことがあります。
これは、時間が経過することで追徴課税額が増加し、より多くの税金を徴収できるためです。
追徴課税には、無申告加算税、延滞税、悪質な所得隠しに対する追加税など、本来の税額に加えて重いペナルティが課されます。
税務署員の評価は徴収した税金の額に影響されるため、彼らにとっては時間をかけてでも多くの税金を徴収することが昇進につながります。
そのため、脱税をしていると疑われるトレーダーは、しばしば数年間の間「泳がされ」、その後に一斉に調査が入ることがあります。
このように、FX取引における脱税は重大なリスクを伴い、最終的には高額な追徴課税や罰金につながる可能性があります。
適切な申告と納税を行うことが、安全かつ安心な取引を維持するためには不可欠です。
ペナルティーの種類 | 追加課税 |
無申告加算税 | 本来の税額が50万円以下の場合15%、50万円超える部分は20%の税が課される。 |
延滞税 | 納期限から2ヵ月までは年7.3%、それ以降は年14.6%の税が課される。 |
悪質な所得隠し | 申告漏れが「悪質」だと判断された場合、別途40%の税が課される。 |
FXの税金の計算方法
FX取引での税金は、取引から得た利益と経費を差し引いた額に20.315%の税率を適用して計算します。
具体的には、FXと他の先物取引からの利益を合計し、そこから取引にかかった経費を引いた後、20.315%を乗じて納税額を求めます。
計算方法
(先物取引にかかる雑所得などの損益-経費)×20.315%=FXの納税額
税金対策や申告漏れの対策方法
税金対策は、違法な脱税ではなく、法律の範囲内で最適な方法を選ぶことです。
具体的には、以下のような方法があります。
- 損益通算
- 記録の管理
- 税務相談
- NISA口座やiDeCoを利用
損益通算
損失を翌年以降に繰り越し、利益が出たときの税負担を減らします。
記録の管理
取引の記録を詳細に残し、申告漏れがないようにします。
税務相談
専門家に相談し、自身の状況に最適な対策を立てます。
NISA口座やiDeCoを利用
国内FXでは、特に損益通算や繰越を活用することが重要です。
また、NISA口座やiDeCoを利用することで、税負担を減らすことが可能です。
海外FXの税金対策
海外FXでは、税率の低い国の業者を選ぶことも一つの方法ですが、それ以上に重要なのは全ての取引記録を正確に保持し、適切に申告することです。
また、海外送金の際は手数料や為替の影響を最小限に抑える方法を選び、資金の流れを明確に管理することが重要です。
確定申告
国内FXでの確定申告
FX取引から利益を得た場合、その利益に対しては確定申告が必要です。
通常、確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までですが、特別な事情や変更がある場合は異なることがあります。
この期間内に、適切な申告書を税務署に提出することが求められます。
申告期限を過ぎてしまうと、無申告加算税が課されるリスクがあります。
また、申告内容に不備がある場合や故意に税額を少なく申告した場合には、さらなる追加税金が課される可能性があります。
土曜日や特定の日が期限の場合、翌開庁日まで提出期限が延長されることもありますので、その年のカレンダーに注意してください。
必要書類
- 年間損益報告書:FX業者から発行
- 源泉徴収票:会社に勤めている人はお勤め先からもらう
- 必要経費の証明書類:領収書や明細書など
- 印鑑
- 確定申告書B
- 所得税申告書第三表
- 先物取引に係る雑所得などの金額の計算証明書
海外FXでも確定申告は必要
海外の取引口座を利用している場合でも、年間で20万円以上の利益があった際には確定申告を行う義務があります。
海外FXの利益は国内口座と異なり、総合課税の対象となり、利益の額に応じて税率が変わる累進課税が適用されます。
これは、利益が多ければ多いほど高い税率が適用されることを意味し、利益額によって税負担が大きく変わる可能性があるため、利益の計算と申告には注意が必要です。
複数の投資での損益通算
金融商品取引における確定申告では、FX取引を含むさまざまな金融商品の損益を一括して計算することが可能です。
店頭FX、取引所FX(例えばくりっく365や大証FX)、金や原油の商品先物取引、日経225などの株価指数先物取引が含まれます。
これらの取引から得られる損益は、全て合算して総損益を算出します。
そして、その合計額に基づいて、確定申告が必要かどうかを判断します。
もしFX取引で利益が出ている場合でも、他の投資で損失が発生していれば、その損失を利益から差し引くことができるので、実際に納める税金の額を減らすことが可能になります。
ただし、現物株や投資信託、NISA口座での取引などは、この損益通算の対象外となるため、これらの取引に関しては別途考慮する必要があります。
FX以外の他の投資で損失が出た場合、それをFXの利益から先引くことができます。
損益の可否 | |
店頭FX | 〇 |
取引所FX | 〇 |
店頭CFD | 〇 |
株価指数 先物取引 (日経225先物など) | 〇 |
商品先物取引 | 〇 |
現物株式 投資信託 | × |
損失繰越控除を利用した3年間の節税
店頭FX、取引所FX、先物取引などの金融商品取引で損失が出た場合、その損失は翌年から3年間、同種の取引で得た利益から差し引くことが可能です。
そのため、将来的に利益が出た際に、過去の損失分を利用して実質的な税負担を軽減できます。
ただし、この損失繰越を利用するためには、損失が発生した年に確定申告を行う必要があります。
もし確定申告を怠ると、その年の損失を翌年以降に繰り越すことができなくなります。
そのため、損失が発生した場合でも、確定申告を行い、繰越控除の権利を確保することが大切です。
さらに、損失繰越を活用するためには、翌年以降も継続して確定申告を行う必要があります。